小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援するための補助金制度です。この補助金の対象となる経費は、11の区分に分類されています。
本記事では、それぞれの区分について具体的な例を挙げながら詳しく説明していきます。まず、最新の公募情報をお伝えします。
中小企業庁は2024年5月8日より、「第16回小規模事業者持続化補助金<一般型>」の公募を開始しました。小規模事業者等が持続的な経営に向けた経営計画を作成し、その計画に基づいて行う販路開拓等の取組や、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するものです。
また、災害の影響を受けた事業者向けの「小規模事業者持続化補助金<災害支援枠>」も設けられています。2024年10月7日に締め切られた第5回公募分では、497件の申請があり、外部有識者による厳正な審査が行われました。それでは、補助対象となる11の経費区分について、具体例とともに詳しく見ていきましょう。
1. 機械装置等費
機械装置等費は、補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に関する経費です。具体的には以下のような例が挙げられます:
- 店舗のショーケースや冷凍冷蔵庫の購入
- 製造業における生産設備や3Dプリンターの導入
- 飲食店での自動食券機やドリンクバーの設置
- 建設業における撮影用ドローンの購入
- 業務効率化のための顧客管理ソフトウェアの導入
注意点として、汎用性が高く目的外使用になりえるもの(例:パソコン、タブレット端末、スマートフォン等)は原則として補助対象外となります。また、100万円(税込)を超える機械装置等の購入は、複数社から相見積もりを取る必要があります。
2. 広報費
広報費は、パンフレットやチラシの作成・配布、看板の設置など、販路開拓に関する広報活動の経費です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 新商品やサービスを紹介するチラシやパンフレットの作成・印刷・配布
- 店舗や事業所の看板の製作・設置
- 新聞や雑誌への広告掲載
- ポスティング用の広告チラシの作成
- 試供品や販促品の製造
ただし、求人広告や会社案内の作成など、販路開拓に直接関係しない広報活動の経費は補助対象外となります。
3. ウェブサイト関連費
ウェブサイト関連費は、販路開拓を目的としたウェブサイトの作成や更新、インターネット広告に関する経費です。具体的には以下のような例があります:
- 自社ウェブサイトのリニューアル
- ECサイトの構築
- ランディングページの作成
- SEO対策の実施
- リスティング広告やSNS広告の出稿
ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4が上限となっています。また、ウェブサイトの更新や運用のみの経費は補助対象外となるため注意が必要です。
4. 展示会等出展費
展示会等出展費は、新商品等を展示会に出展したり商談会に参加したりするための経費です。オンラインでの展示会や商談会も含まれます。具体例としては以下のようなものがあります:
- 展示会や商談会の出展料
- 展示品の運搬費(レンタカー代、ガソリン代、運送費)
- 展示会用の備品レンタル料
- 通訳料や翻訳料
- オンライン展示会のシステム利用料
ただし、展示会出展の申込みだけでは補助対象外となります。実際に展示会に出展することが必要です。
5. 旅費
旅費は、販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための交通費や宿泊費です。具体的には以下のような経費が対象となります:
- 展示会や商談会への参加のための交通費
- 新規取引先との商談のための出張費
- 海外での販路開拓活動に伴う航空券代
- 宿泊費(上限あり)
- 出入国税や航空保険料
ただし、グリーン車、ビジネスクラス等の特別に付加された料金は補助対象外です。また、タクシー代やレンタカー代は、公共交通機関の利用が困難な場合のみ対象となります。【再作成した記事:後半(2,000字)】
6. 開発費
開発費は、新商品の試作品や包装パッケージの試作開発に伴う原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる経費です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 新商品の試作品製作のための原材料費
- 新商品のパッケージデザイン料
- 新サービスの開発に伴うシステム開発費
- 製品の改良に係る設計費
- 試作品の製造委託費
ただし、開発した商品の生産・販売を目的とした原材料の購入は補助対象外となります。
7. 資料購入費
資料購入費は、補助事業に関連する資料・図書の購入費です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 市場調査のための業界誌の購入
- 新商品開発に必要な専門書の購入
- 競合分析のための統計資料の購入
ただし、補助事業に直接関係のない書籍や雑誌の購入は補助対象外です。また、1冊あたりの取得単価が10万円(税込)未満のものに限られます。
8. 雑役務費
雑役務費は、補助事業のために臨時的に雇い入れたアルバイトやパート、派遣労働者の賃金や交通費などの経費です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 展示会でのアルバイトスタッフの人件費
- イベント運営のための臨時スタッフの交通費
- 繁忙期の臨時雇用者の賃金
ただし、正社員や役員、個人事業主本人の人件費は補助対象外となります。また、雇用契約書等の書面が必要です。
9. 借料
借料は、機器・設備等のリース料やレンタル料(所有権移転を伴わないもの)です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 展示会用の備品レンタル料
- 新サービス提供のための機器リース料
- イベント開催のための会場借上げ費
ただし、補助事業以外にも使用できる汎用性の高い機器(パソコン、タブレット等)のレンタル料は補助対象外となります。
10. 設備処分費
設備処分費は、新たなサービス提供や販路開拓のためのスペースを確保する等の目的で、既存設備を処分する際の経費です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 店舗改装のための古い設備の撤去・処分費用
- 新サービス提供のための機器の入れ替えに伴う旧機器の処分費用
- 展示スペース確保のための不要設備の廃棄費用
ただし、設備処分費は補助対象経費総額の1/2を上限とします。また、処分を行う業者の事前見積もりが必要です。
11. 委託・外注費
委託・外注費は、上記の区分に該当しない経費で、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託(外注)する経費です。具体例としては以下のようなものがあります:
- 店舗改装工事の外注費
- 市場調査の委託費
- ホームページ制作の外注費
- 商品開発に係るデザイン委託費
- インボイス制度対応に向けた専門家への相談費用
ただし、委託・外注費は補助対象経費総額の1/2を上限とします。また、委託・外注を行う場合は、第三者の見積書が必要です。以上が小規模事業者持続化補助金の補助対象経費の11区分とその具体例です。補助金を申請する際は、これらの区分に該当するか、また各区分の注意点を十分に確認することが重要です。また、補助対象外となる経費もありますので、以下の点に特に注意が必要です:
- 交付決定前に発注・契約、購入、支払いを行った経費
- 通常の事業活動に係る経費(事務所の家賃、光熱水費、電話代等)
- 販売や有償レンタルを目的とした製品、商品等の生産・調達に係る経費
- 自動車等車両の購入費(一部例外あり)
- オークションによる購入(インターネットオークションを含む)
- 自社内部やフランチャイズチェーン本部との取引による経費
- 飲食、奢侈、娯楽、接待等の費用
- 税務申告、決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用
- 金融機関などへの振込手数料
- 公租公課(消費税・地方消費税は補助対象外)
補助金の申請にあたっては、事業計画との整合性を十分に検討し、適切な経費計上を行うことが採択につながる重要なポイントとなります。また、申請前に専門家に相談することをおすすめします。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の皆様にとって貴重な支援制度です。この制度を有効活用し、自社の販路開拓や生産性向上につなげていただければと思います。