1. はじめに
広島県の中山間地域である三次市、庄原市、安芸高田市は、豊かな自然と肥沃な土地に恵まれた農業地域として知られています。しかし、近年の農業従事者の高齢化や後継者不足により、地域農業の持続可能性が大きな課題となっています。特に、これらの地域では集落営農が地域農業の重要な担い手となっており、その発展が地域経済の活性化に直結しています。
そこで本日は、これらの地域で活用できる「集落営農活性化プロジェクト促進事業」について、具体的な活用方法とメリットを詳しくご紹介します。この補助金は、集落営農組織が抱える様々な課題を解決し、持続可能な農業経営を実現するための強力な支援ツールとなります。
2. 概要
本事業は、集落営農組織の持続的な発展を支援する国の補助事業です。その特徴は、単なる資金援助にとどまらず、組織の将来ビジョンの策定から、人材確保、収益力向上まで、総合的な支援を提供する点にあります。
①補助金額:
最大1,000万円という手厚い支援額が設定されています。これは、集落営農組織の本格的な経営改革を可能にする金額であり、複数年度にわたる計画的な投資を実現できます。
②補助率:
事業メニューごとに異なる補助率が設定されており、定額補助(全額補助)と1/2以内の補助があります。これにより、組織の財政状況に応じた柔軟な事業計画が可能となります。
③補助対象経費:
本事業では、以下の経費が補助対象となります。
・ビジョン策定に必要な経費:地域の将来を見据えた計画づくりに必要な費用全般
・人材確保に関する経費:若手人材の雇用に関する給与や社会保険料等
・収益力向上のための経費:新規作物の試験栽培や加工品開発、販路開拓等
・法人化に要する経費:法人設立に必要な各種手続き費用
・共同利用機械の導入費用:50万円以上の農業用機械等の購入費
④補助対象者:
支援を受けられる対象は以下の通りです。
・単独の集落営農組織
・複数の集落営農組織が連携した広域組織
・集落営農組織と農業法人が連携した組織
いずれの場合も、地域農業の維持・発展に寄与する取り組みを行う組織であることが条件です。
⑤申請期限:
申請期限は年度ごとに設定されます。特に、複数年度の事業計画を検討している場合は、初年度の申請を確実に行うことが重要です。各市の農業振興課に早めに相談することをお勧めします。
⑥申請要件:
申請にあたっては、以下の要件を満たす必要があります。
・事業実施年度の具体的な成果目標の設定
・目標達成に向けた実現可能な計画の策定
・地域の関係機関との連携体制の構築
3. 想定される活用事例
①問題点:
比婆高原営農組合(仮称)の事例を見てみましょう。この組織は、設立から15年が経過し、以下のような課題を抱えていました。
・構成員の平均年齢が70歳を超え、作業の担い手が不足
・米作中心の経営により、収益が天候や米価に大きく左右
・施設・機械の老朽化による作業効率の低下
・若手人材の確保が困難な賃金水準
②補助金による問題解決:
この状況を打開するため、三和高原アグリビジネス(仮称)は本事業を活用し、3年計画で以下の改革を実施しました。
1年目:
・集落ビジョンの策定と合意形成
・若手2名の新規雇用(補助金を活用した給与保障)
・高収益作物として安芸高原ほうれん草(仮称)の試験栽培開始
2年目:
・栽培面積の拡大と販路開拓
・共同利用機械の導入による作業効率化
・加工品開発の着手
3年目:
・経営の多角化の実現
・通年雇用体制の確立
・法人化による経営基盤の強化
この結果、以下のような成果が得られました:
・売上高が前年比30%増加
・若手従業員の定着率100%
・生産性が40%向上
・地域ブランド化による知名度向上
4. 詳細な説明
①補助金額について:
本事業では、最長3年間で最大1,000万円という充実した支援が受けられます。この補助金額は、次のような計画的な活用が可能です。
1年目(400万円の活用例):
・ビジョン策定費用:50万円
・若手人材2名の人件費:200万円
・試験栽培設備投資:150万円
2年目(350万円の活用例):
・若手人材の人件費:200万円
・販路開拓費用:100万円
・加工品開発費用:50万円
3年目(250万円の活用例):
・若手人材の人件費:200万円
・法人化経費:25万円
・経営管理システム導入:25万円
②補助率について:
補助率は支援内容によって異なります。
定額補助(全額補助)が適用される項目:
・人材確保費用(上限100万円/年/人)
– 給与、各種手当
– 社会保険料事業主負担分
– 研修費用
・収益力向上の取組
– 試験栽培費用
– 加工品の試作費用
– 市場調査費用
・法人化経費(上限25万円)
– 定款作成費用
– 登記費用
– 専門家相談料
1/2以内の補助が適用される項目:
・共同利用機械の導入
– トラクター
– コンバイン
– 乾燥調製施設
– 選果場設備
③補助対象経費の詳細:
ビジョン策定関連:
・専門家への謝金:1回あたり2万円まで
・先進地視察の旅費:実費
・資料印刷費:実費
・会議費:1回あたり5千円まで
人材確保関連:
・基本給:月額上限20万円
・各種手当:月額上限5万円
・社会保険料:実費
・研修費用:年間上限10万円
収益力向上関連:
・種苗費:実費
・肥料農薬費:実費
・資材費:実費
・市場調査旅費:実費
・展示会出展費:1回50万円まで
④補助対象者の詳細要件:
集落営農組織の場合:
・構成農家が3戸以上
・規約等の定めがあること
・共同販売経理を行っていること
・地域の農地面積の過半を占めること
連携組織の場合:
・構成員の過半が集落営農組織であること
・代表者の定めがあること
・組織及び運営についての規約を定めていること
・組織として独立した経理を行っていること
⑤申請期限:
事業実施年度の前年度に申請を行う必要があります。具体的な期限は以下の通りです。
一次募集:前年度2月末まで
二次募集:前年度3月末まで(予算残額がある場合)
※実際の期限は年度により変動する可能性があり、各市農業振興課に要確認
⑥申請要件の詳細:
必要な成果目標:
・売上高の増加:10%以上
・経営コストの削減:5%以上
・新規作物の導入:1品目以上
・雇用の創出:1名以上
組織体制に関する要件:
・意思決定機関の明確化
・経理の一元化
・栽培管理の統一化
・労務管理体制の整備
5. 申請手順
申請を成功させるためには、以下のステップを丁寧に進めることが重要です。
- 事前準備段階:
・集落内での合意形成
集落の全構成員を集めた説明会を開催し、事業の目的や効果について共通理解を形成します。この際、将来の営農ビジョンについても話し合いを行います。
・現状分析の実施
組織の強み弱み分析や、財務状況の確認、人材の過不足の把握など、現状を詳細に分析します。この分析結果は事業計画の基礎となります。
- 相談・協議段階:
・市役所農業振興課への事前相談
補助事業の詳細な要件や、申請に必要な書類について確認します。この際、過去の採択事例なども参考にできます。
・関係機関との協議
JAや農業普及指導センターなど、支援機関との連携体制を構築します。特に技術指導や販路開拓において、これらの機関のサポートは重要です。
- 計画策定段階:
・集落ビジョンの策定
組織の5年後、10年後の姿を具体的に描き、その実現に向けたロードマップを作成します。このビジョンは、以下の要素を含める必要があります:
- 営農計画(作付計画、労働力配分等)
- 設備投資計画
- 人材育成計画
- 収支計画
・事業計画書の作成
補助事業で実施する具体的な取り組みについて、以下の項目を明確に記載します:
- 実施事項とスケジュール
- 必要経費の積算
- 期待される効果
- 目標達成指標
- 申請書類作成段階:
・必要書類の収集
定款、規約、総会議事録、決算書類など、申請に必要な添付書類を準備します。
・申請書の作成
補助金交付申請書をはじめ、各種様式に必要事項を記入します。特に以下の点に注意が必要です:
- 記載内容の整合性確保
- 数値の正確な算出
- 必要な押印の確認
- 申請・審査段階:
・市役所への申請書類提出
申請書類一式を市役所農業振興課に提出します。この際、記載内容について説明を求められる場合があります。
・都道府県による審査
提出された申請書類は都道府県で審査されます。審査のポイントは以下の通りです:
- 事業目的との整合性
- 計画の実現可能性
- 費用対効果
- 地域への波及効果
- 採択後の実施段階:
・事業の開始
採択通知を受けた後、計画に従って事業を開始します。実施にあたっては以下の点に留意が必要です:
- 計画との整合性の確保
- 経理処理の適正な実施
- 進捗状況の管理
・実績報告
事業終了後、実績報告書を提出します。報告書には以下の内容を含めます:
- 実施内容の詳細
- 支出内容と証拠書類
- 成果指標の達成状況
6. まとめ
広島県三次市、庄原市、安芸高田市の集落営農組織にとって、本事業は経営改革の絶好の機会となります。特に、若手人材の確保や高収益作物への挑戦を考えている組織には、大きなメリットがあります。
補助金の活用により、以下のような効果が期待できます:
・持続可能な経営体制の確立
・収益性の向上
・地域農業の活性化
・雇用の創出
・地域ブランドの確立
申請に関するご相談は、各市の農業振興課または行政書士にお気軽にご相談ください。補助金申請のプロフェッショナルである行政書士は、以下のようなサポートを提供します:
・申請書類の作成支援
・事業計画の策定支援
・関係機関との調整
・実績報告のサポート
本事業を活用し、地域農業の新たな発展を目指しましょう。まずは、お近くの行政書士事務所に相談し、貴組織に最適な活用方法を検討することをお勧めします。