中小企業省力化投資補助事業の概要
中小企業省力化投資補助事業は、令和6年度補正予算において大幅な改正が行われ、より使いやすい制度へと進化しました。この補助金は、人手不足に悩む中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しすることを目的としています。主な変更点と制度の詳細について解説します。
予算規模の拡大
既存基金を活用して3,000億円規模の予算が措置されることになりました。これは、政府が中小企業の省力化投資を重要視していることを示しています。
申請枠の拡充
カタログ注文型
従来から実施されてきたカタログ注文型は継続されます。この枠では、あらかじめ登録された製品カタログから、IoTやロボットなどの人手不足解消に効果的な汎用製品を選択して導入する仕組みとなっています。
一般型(オーダーメイド形式)の新設
令和7年(2025年)から新たに「一般型」という枠組みが設けられます。特徴は以下の通りです。
- オーダーメイド形式での申請が可能
- 各企業が「このような製品を使いたい」という形で申請ができる
- カタログに登録されていない製品でも申請可能
- ソフトウェアとハードウェアの両方が支援対象
これにより、企業はより柔軟な省力化投資を行うことができるようになります。
補助上限額と補助率
カタログ注文型
- 補助率:1/2
- 補助上限額(従業員数に応じて変動)
- 5人以下:200万円(大幅な賃上げを行う場合:300万円)
- 6~20人:500万円(大幅な賃上げを行う場合:750万円)
- 21人以上:1,000万円(大幅な賃上げを行う場合:1,500万円)
一般型
- 補助率
- 補助金額1,500万円までは1/2(小規模・再生事業者は2/3)
- 1,500万円を超える部分は1/3
- 最低賃金引上げ特例として、小規模・再生事業者を除き補助率を2/3に引き上げ可能
- 補助上限額(従業員数に応じて変動)
- 5人以下:750万円(大幅賃上げ時:1,000万円)
- 6~20人:1,500万円(大幅賃上げ時:2,000万円)
- 21~50人:3,000万円(大幅賃上げ時:4,000万円)
- 51~100人:5,000万円(大幅賃上げ時:6,500万円)
- 101人以上:8,000万円(大幅賃上げ時:1億円)
補助対象者
補助対象者は、交付申請時点で日本国内で法人登記等がされ、日本国内で事業を営む中小企業等です。ただし、以下の事業者は対象外となります。
- みなし大企業
- 確定している直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者
補助対象要件
主な補助対象要件は以下の通りです。
- 労働生産性の向上目標
- 補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる事業計画を策定・実行すること。
- 賃上げ目標(補助上限額の引き上げを希望する場合)
- 事業場内最低賃金を45円以上増加させ、かつ給与支給総額を6%以上増加させる計画を従業員に表明し実行すること。
- 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に使用しないこと。
- 効果報告期間中は、補助事業者が自然退職や自己都合退職以外の解雇を積極的に行わないこと。
- 補助額が500万円以上の場合は、所定の保険への加入を行うこと。
補助対象経費
カタログ注文型の場合
- 製品本体価格
- 導入に要する費用(導入経費)
一般型の場合
具体的な補助対象経費はまだ公表されていませんが、ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠に類似したものになると予想されています。
申請プロセス
- 公募要項を確認
- 補助金の対象となるかを確認する。
- gBizIDプライムアカウントを取得
- カタログから製品と販売事業者を選択(カタログ注文型の場合)
- 事業計画を策定し、交付申請を行う
- 中小企業等と販売事業者が共同で事業計画を策定。
- 交付決定
- 交付決定日から12か月以内が補助事業期間。
- 補助事業の実施と実績報告の提出
- 補助額の確定と補助金の支払いを受ける
申請期間
令和6年6月25日から随時受付中で、令和8年9月末まで予定されています。約2年半の期間で、15回程度(年間約6回)の頻度で実施される予定です。
採択率と審査のポイント
現時点での正確な採択率は公表されていませんが、類似の補助金制度の採択率を参考にすると、45%~85%程度と予想されます。
採択されるためのポイントとしては以下が挙げられます。
- 労働生産性向上の具体的な計画と数値目標の設定
- 賃上げ計画の具体性と実現可能性
- 導入する省力化製品と事業内容の整合性
- 事業計画の実現可能性と具体性
注意点
- カタログ注文型と一般型では、要件や補助率、補助上限額が異なるため、自社に適した申請枠を選ぶことが重要です。
- 賃上げ目標を達成できなかった場合は、補助金額の減額が行われる可能性があります。
- 補助事業期間終了後も、3年間にわたって効果報告が必要です。
- 一般型については詳細がまだ公表されていないため、定期的に公式サイトや中小企業庁の「中小企業対策関連予算」をチェックすることが重要です。
- 申請には gBizID プライムアカウントが必要となるため、早めの取得が推奨されます。
まとめ
中小企業省力化投資補助事業は、令和6年度補正予算により大幅に拡充され、より多くの中小企業が活用しやすい制度となりました。カタログ注文型に加えて一般型が新設されたことで、企業の個別ニーズに合わせた柔軟な省力化投資が可能になります。
補助上限額の引き上げや、ソフトウェアとハードウェアの両方を対象とするなど、支援の幅が広がったことで、中小企業の生産性向上や人手不足解消に大きく貢献することが期待されます。
ただし、労働生産性の向上目標や賃上げ目標など、厳しい要件も設定されているため、申請にあたっては綿密な事業計画の策定が求められます。また、補助事業期間終了後も効果報告が必要となるなど、長期的な視点での取り組みが求められます。
中小企業経営者の皆様は、この補助金制度を活用して、自社の課題解決や成長戦略の実現に向けて積極的に取り組むことをおすすめします。申請に際しては、専門家のアドバイスを受けるなど、慎重に準備を進めることが採択につながる重要なポイントとなるでしょう。