【活用事例 予想】老舗和菓子店の挑戦 – 三次市事業承継支援事業補助金で実現する新旧の調和
1. はじめに
広島県北部の交通の要衝として知られる三次市。この地で代々受け継がれてきた事業者の多くが、今まさに重要な転換期を迎えています。事業承継は単なる経営者の交代ではなく、先代が築き上げた伝統と信頼を守りながら、新しい時代に適応していく重要な過程です。
三次市では、このような事業承継の課題に直面する事業者を支援するため、「三次市事業承継支援事業補助金」を用意しています。この制度は、事業価値を次世代に確実に引き継ぎ、地域経済の活力を維持・向上させることを目的としています。
https://www.city.miyoshi.hiroshima.jp/soshiki/31/1555.html
2. 概要
三次市事業承継支援事業補助金は、事業承継に伴う様々な課題解決を支援する包括的な制度です。具体的な内容を詳しく見ていきましょう。
①補助金額
事業者の取り組む内容によって、二つの補助上限額が設定されています。施設整備等を行う場合は1事業者あたり最大100万円まで、相談会等の開催については最大10万円までの補助が受けられます。これらの補助金は、事業承継を成功に導くための重要な支援となります。
②補助率
補助対象となる経費の2分の1以内が支給されます。例えば、200万円の施設整備を行う場合、最大100万円までの補助を受けることが可能です。ただし、算出された補助金額に千円未満の端数が生じた場合は切り捨てとなりますので、申請時にはご注意ください。
③補助対象経費
補助金の対象となる経費は、事業承継に直接関係する以下の項目です:
- インターネット環境の整備費用:デジタル化に対応するための設備投資
- 広告宣伝費:新たな経営体制への移行を周知するための費用
- 事業所の増改築等施設整備:店舗や工場、事務所等の改装・改修費用
- 相談会等の開催費用(三次商工会議所、三次広域商工会に限る)
なお、施設整備に関しては、備品や什器等の購入費用は対象外となります。また、工事や印刷物の制作は市内に本店を有する事業者に発注することが条件となっています。
④補助対象者
本補助金を利用できるのは、以下の要件を満たす事業者です:
- 三次市内に本店を置く法人の代表者または個人事業主であること
- 中小企業基本法第2条に規定される中小企業者であること
- 市内で5年以上事業を継続していること
- 三次商工会議所または三次広域商工会で事業承継支援を受けていること
⑤申請期限
2024年度の申請受付を実施中です。ただし、予算には限りがありますので、早めの申請をお勧めします。
⑥申請要件
申請にあたっては、以下の条件を全て満たす必要があります:
- 納期限の到来した市税・料を完納していること
- 後継者は申請時点で65歳以下であること
- 週4日以上の営業を行っていること
- 風俗営業等の規制対象事業や公序良俗に反する事業でないこと
- 同一事業について他の公的助成を受けていないこと
3. 想定される活用事例
三次市の中心部で60年以上の歴史を誇る「みよし屋和菓子本舗(仮称)」の事例をもとに、補助金の具体的な活用方法をご紹介します。
①直面していた問題点
同店では、以下のような課題を抱えていました:
- 73歳の先代店主から42歳の息子への事業承継を控えている
- 店舗設備の老朽化が進み、特に厨房設備の更新が急務
- 従来の商習慣に依存し、キャッシュレス決済に対応できていない
- 商圏内の高齢化により来店客数が減少傾向
- 若い世代への認知度不足
- 伝統的な和菓子の技術は継承できているが、経営のデジタル化が遅れている
②補助金を活用した具体的な問題解決策
本補助金を活用し、以下のような総合的な事業承継計画を実施することで、課題解決を図ることができます:
店舗設備の近代化(補助対象経費:160万円)
- 和菓子製造室の床面改修と空調設備の更新
- 衛生管理基準に適合した作業台の設置
- バリアフリー対応のための店舗入口の改修
デジタル化への対応(補助対象経費:40万円)
- POSレジシステムの導入によるキャッシュレス決済対応
- 在庫管理システムの構築
- 顧客管理データベースの整備
情報発信力の強化(補助対象経費:20万円)
- 公式ウェブサイトの制作
- 店舗紹介パンフレットの作成
- SNSを活用した新商品情報の発信体制構築
4. 詳細な説明
①補助金額の詳細
補助金の上限額は事業内容によって異なります:
- 増改築等施設整備等:最大100万円まで
- 設備投資や改装工事など、物理的な環境整備が対象
- 消費税・地方消費税は補助対象外
- 相談会等の開催:最大10万円まで
- 事業承継に関する相談会やセミナーの開催費用
- 商工会議所・商工会のみが申請可能
②補助率の具体的計算方法
補助対象経費の2分の1以内が補助されます。具体的な計算例は以下の通りです:
例1)設備投資総額が180万円の場合
- 補助対象経費:180万円
- 補助率:1/2
- 補助金額:90万円(上限100万円以内)
例2)相談会開催費用が25万円の場合
- 補助対象経費:25万円
- 補助率:1/2
- 補助金額:10万円(上限額まで)
③補助対象経費の詳細と注意点
対象となる経費について、具体的な要件を説明します:
インターネット環境整備
- 事業承継に必要なネットワーク機器の導入
- 業務効率化のためのシステム構築費用
広告宣伝費
- 市内の印刷業者による制作物に限定
- 新経営体制の周知や新サービスの告知に関する費用
施設整備
- 市内の施工業者による工事に限定
- 備品・什器は対象外
- 事務所、工場、店舗等の増改築費用
④補助対象者の詳細要件
対象となる事業者の具体的な要件は以下の通りです:
法人の場合
- 三次市内に本店登記があること
- 中小企業基本法の定義に該当すること
- 5年以上の事業継続実績
個人事業主の場合
- 三次市内で事業を営んでいること
- 青色申告を行っていること
- 5年以上の事業継続実績
⑤申請期限と審査の流れ
2024年度の申請を受け付けています。申請から交付までの流れは以下の通りです:
- 事前相談(商工会議所または商工会)
- 認定申請書類の提出
- 審査会による審査(約2週間)
- 認定通知
- 交付申請
- 交付決定
⑥申請要件の詳細説明
申請要件について、特に注意が必要な点を説明します:
事業継続要件
- 週4日以上の営業が必須
- 事業承継後も三次市内での事業継続が前提
後継者要件
- 申請時65歳以下であること
- 経営能力を有することの証明が必要
除外事業
- 風俗営業等の規制対象事業は対象外
- フランチャイズチェーン店は対象外
5. 申請手順
申請から補助金受給までの具体的な手順をご説明します:
STEP1:事前準備(1~2週間)
- 三次商工会議所または三次広域商工会への相談
- 事業承継計画の策定支援を受ける
- 必要書類の収集
- 決算書または確定申告書
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 定款(法人の場合)
STEP2:事業者認定申請(2~3週間)
- 認定申請書の作成
- 事業計画書の作成
- 経営指導等証明願の取得
- 書類提出と審査
STEP3:交付申請(2~3週間)
- 交付申請書の作成
- 事業計画書・収支予算書の作成
- 見積書等の添付書類準備
- 申請書類の提出
STEP4:事業実施と報告
- 交付決定後に事業開始
- 事業完了後、実績報告書の提出
- 補助金の請求
- 補助金の受給
6. まとめ
三次市事業承継支援事業補助金は、地域経済の持続的な発展を支える重要な制度です。本制度を活用することで、以下のような効果が期待できます:
- 円滑な事業承継の実現
- 設備の近代化による生産性向上
- デジタル化による業務効率の改善
- 新規顧客の開拓
- 地域経済の活性化
事業承継でお悩みの方は、まずは三次商工会議所(Tel:0824-62-6171)または三次広域商工会にご相談ください。また、申請書類の作成には専門家のサポートを受けることをお勧めします。地域の行政書士に相談することで、スムーズな申請手続きが可能となります。
補助金の活用で、先代から受け継いだ事業の価値を更に高め、次の世代へとつないでいきましょう。