「日本の学び応援基金」

中山間地域の伝統を未来へ – 第4回「日本の学び応援基金」活用ガイド

目次

1. はじめに

広島県北部の中山間地域には、長い歴史と共に受け継がれてきた豊かな文化があります。比婆山の麓に広がる庄原市、三次盆地に位置する三次市、そして吉田町を中心とする安芸高田市。これらの地域では、神楽や茶道、書道といった日本の伝統文化が今なお大切に守られています。

しかし、少子高齢化や若者の都市部への流出により、これらの貴重な文化財産の継承が危機に瀕しているのも事実です。そんな中、公益財団法人日本フィランソロピック財団が実施する第4回「日本の学び応援基金」は、地域の文化継承に取り組む組織にとって、まさに追い風となる支援制度といえるでしょう。

2. 概要

この助成金制度の核心部分について、詳しくご説明していきます。

まず、補助金額についてですが、1団体あたり最大100万円という充実した支援額が用意されています。この金額は、年間を通じた文化継承活動の実施に十分な規模といえるでしょう。

補助対象となる経費は、活動に必要な実質的なコストを広くカバーしています。例えば、伝統文化を教えるための教材購入費や、活動場所となる会場の賃貸料、指導者への人件費、さらには活動記録や広報のための印刷製本費なども含まれます。これにより、活動の立ち上げから継続的な運営まで、包括的な支援を受けることができます。

特筆すべきは、外部専門家への謝金も申請額の50%まで認められていることです。例えば、神楽の専門家を招いての特別講習会や、茶道の名手による指導など、質の高い文化継承活動を実現することが可能となります。

3. 想定される活用事例

ここでは、実際の活用例として、比婆山麓民俗芸能保存会(仮称)の事例を詳しく見ていきましょう。

この保存会は、庄原市の山間部で活動する任意団体です。主な活動は、地域に伝わる伝統芸能の保存と継承ですが、近年いくつかの深刻な課題に直面していました。

第一の課題は、若手継承者の確保です。現在の指導者の多くが60代以上となっており、次世代への技術伝承が急務となっています。第二に、練習場所の確保が困難になってきているという問題があります。従来使用していた集会所が老朽化し、十分な活動スペースを確保できない状況が続いています。第三に、活動を記録し保存するためのデジタル化が進んでいないという課題があります。

この助成金を活用することで、以下のような包括的な問題解決が可能となります:

まず、月2回の定期的な若手育成講座を開催できます。これには会場費として年間24万円、指導者謝金として36万円を充当。さらに、活動の様子を4K画質で撮影・編集し、デジタルアーカイブとして保存するための機材購入に30万円、残りの10万円を教材作成と広報活動に充てる計画を立てることができます。

4. 詳細な説明

ここからは、助成金の具体的な内容について、さらに詳しく解説していきます。

【補助金額と補助率】
総額500万円の予算枠の中から、5~7団体に対して助成が行われます。1団体あたりの上限額は100万円です。補助率は対象経費の100%となっており、自己負担なしで事業を実施できる点が特徴です。

【補助対象経費の詳細】
対象となる経費は、事業の実施に直接必要な費用です。例えば、三次市の茶道教室(仮称)では、以下のような経費が認められています:

  • 茶道具や教材の購入費用
  • 茶室の賃借料
  • 指導者やアシスタントへの謝金
  • お茶や菓子などの消耗品費
  • 案内状の送付や連絡用の通信費
  • 活動記録用の印刷費
  • 必要な備品のリース代や購入費

また、外部専門家への委託費用も申請額の50%まで認められており、質の高い指導を実現できます。さらに、団体の運営管理費として、申請額の5%まで計上することが可能です。

【補助対象者の詳細】
支援を受けられる団体は、法人格の有無を問わず、以下の要件を満たす必要があります。安芸高田市の「土師伝統文化継承会(仮称)」を例に、具体的な要件を見ていきましょう。

この会は、設立から3年が経過し、地域の伝統行事や工芸品の製作技術を継承する活動を行っています。任意団体でありながら、明確な会則を持ち、年間を通じて定期的な活動を実施している点が、申請要件に合致しています。特に重要なのは、営利を目的としない活動であること。伝統工芸品の製作技術を教える際も、収益は教材費と運営費のみに充当し、利益を出さない運営を心がけています。

【申請期限と重要なスケジュール】
申請期限は2025年1月8日(水)17:00までとなっています。ここで注意したいのは、単なる締切日ということではありません。助成金の交付を受けた場合、2025年4月から2026年3月までの1年間が事業実施期間となります。例えば、三次市の「備後史学研究会(仮称)」では、この期間を以下のように効果的に計画しています:

4月~6月:事業の準備期間

  • 講師陣の確定と年間スケジュールの策定
  • 教材開発と印刷
  • 参加者募集の広報活動

7月~12月:本格的な活動期間

  • 月2回の定期講座開催
  • 四半期ごとの特別講演会実施
  • 活動記録のデジタル化

1月~3月:まとめと次年度への準備

  • 活動報告書の作成
  • 次年度計画の策定
  • 成果発表会の開催

5. 申請手順

申請手続きは、助成電子申請システム「Graain」を通じて行います。初めて申請する団体のために、手順を具体的に説明していきましょう。

【Step 1:準備段階】
まず、申請に必要な書類を整理します。庄原市の「比婆民謡保存会(仮称)」の例を参考に、具体的な準備物を見ていきましょう。

  • 応募用紙(6ページ以内):事業計画の核となる重要書類です。なぜこの事業が必要なのか、どのような効果が期待できるのかを、具体的な数値目標を含めて記載します。例えば、「年間100名の小中学生に民謡の基礎を教える」「5名の若手指導者を育成する」といった明確な目標設定が重要です。
  • 団体紹介資料:活動実績が分かる資料が必要です。過去の活動写真、新聞記事、広報チラシなどを時系列でまとめると効果的です。
  • 財務関係書類:過去2年分の収支報告書と今年度の予算書が必要です。任意団体の場合でも、収支を明確に記録していることが重要です。

【Step 2:Graainシステムでの手続き】

  1. システムへのアカウント作成
    システムにアクセスし、新規登録を行います。登録の際は、団体の正式名称や代表者名などの基本情報を正確に入力することが重要です。
  2. 申請プログラムの選択
    ログイン後、「第4回日本の学び応援基金」を選択します。この際、他の助成プログラムと間違えないよう、名称を確認することが重要です。
  3. 書類のアップロード
    準備した書類を、指定された形式(PDFやWord)で提出します。ファイル名は「団体名_書類種別」のように分かりやすい名称をつけることをお勧めします。

【Step 3:申請後の対応】
申請書類の提出後も、Graainシステム上で随時連絡が入る可能性があります。システムからの通知を見落とさないよう、定期的なチェックが必要です。

6. まとめ

この助成金は、三次市、庄原市、安芸高田市の文化継承活動にとって、大きな可能性を秘めています。特に重要なのは、単年度で終わる事業ではなく、継続的な活動の基盤づくりという視点です。補助金を活用して整備した教材や記録は、次世代への貴重な財産となります。

申請に際しては、地域の行政書士への相談も有効です。特に、事業計画の立案や予算書の作成について、専門家のアドバイスを受けることで、より充実した申請書類を作成できます。弊所では、初回相談を無料で受け付けております。ご不明な点などございましたら、どうぞお気軽にお声かけ願います。

広島県北部の豊かな文化を次世代に継承していくために、この助成金制度を有効に活用していただければと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次